対人関係について、もう少し深掘りしていきましょう。
人と接している時、『損をしないように』という考えに囚われていませんか?
その考えは、対人関係を根底から崩壊させてしまう威力があります。
それを変えてみませんか?
目次
『勝ち負け』でみる対人関係は辛い
人との関係は、常にお互いが対等であるはずですね。けれど、現実にはどちらかが上でどちらかが下にあり、またどちらかが勝ってどちらかが負ける仕組みが構築されています。
その根底にある思いは、なんだと思いますか?
人が何よりも恐ること、それは『損をすること』です。
自分だけが知らなかった、自分だけが得られなかったとなると、人は頭をかきむしるほどい苛立ち、強い後悔の念を抱きます。たとえそれが、遠い他の国の出来事であったとしても、隣で起きたことのように悔しがるのです。
実際には手にすることができないようなものでも、「損をしたかもしれない」という思いがあるだけで、損をした気持ちになってしまいます。その思いは想像するよりも強く、「次は絶対に損をしたくない」と思わせます。
その思いが、人を蹴散らしてでも利益を得ようとする行動へと走らせ、対人関係を『勝ち負け』として見るようになってしまいます。
勝ち負けが対人関係の基礎になってしまうと、人と接するのが苦痛でしかありません。常に相手の行動を読んで、その先にあるかもしれない利益を相手よりも先に手にしようと緊張状態でいるからです。もちろん、相手もそんな考えを持っていると思い込んでいるので、相手を敵として認識しています。
こんな関係は、疲れてしまうだけですよね。
人とは、本来対等です。どちらかが損をする関係は、長続きしません。そして、その報復をいつか受ける羽目になってしまうでしょう。
良い関係とは、お互いが心地よい状態でいられること、利益があるならお互いが望んだ状態を得られることです。その為にお互いが知識を結集し、力を尽くすのです。決して相手を出し抜く為ではありません。
良好な対人関係を築く五つをご紹介します。
人と接する時、思い出してみてください。この考えが身につけば、人との接し方は必ず変わっていきます。
1.誠実であること
会社などの組織の中にいれば、不平不満があった時には上司や該当する部署に相談することもできるが、家族や友人相手ではそうはいきませんよね。
そんな時、考える面倒よりも自分、もしくは相手が「ちょっとだけ損すればいい」と短絡的に考えてしまいます。それによって関係にヒビを入れてしまうことは、その瞬間には思いつきもしないでしょう。
自分に対して、相手に対して常に誠実でいることは、対人関係の土台です。
考えるのが面倒だからと、誰かに損や面倒を押し付けるのは、相手に対して不誠実ですね。かといって、それを自分が受けようとするのもまた、自分に対しての不誠実にあたります。
誠実であることとは、自分にとっての最上の結果は何なのかを知り、同じことを相手の立場でも考えることです。自分と相手と、対等に扱う姿勢が誠実さの表れです。
相手を自分のことのように、自分を相手のことのように考えてみてください。そうしたら、どちらかが損をするなんて結果を選ぼうとはしなくなります。
2.良好な関係が前提
対人関係の大切な土台は、誠実であることでした。ですが、それだけでは対人関係は成り立ちません。
関係は、必ず誰か相手がいるものです。つまり、相手との良好な関係があってこそ、はじめてお互いが利益を得られる結果を望める状態になるのです。
そこには、確かな信頼が築かれていなくてはなりません。
信頼のある対人関係の築き方については、前回詳しくご紹介しました。何度でも読み直し、考えを磨いてみてください。
【【第五回】人との関わりを良くする為に】
誠実であることと信頼という二つの土台がなくても、お互いに利益を追求しようという関係を結ぶことは可能です。しかし、その関係は一時的で、何かあればすぐに崩れてしまうほど脆いものです。
どちらかが危機的状況に陥れば、もう一方はすぐに手のひらを返して逃げ去ってしまうでしょう。元々が利益でしか繋がれない薄い関係です。危機に陥った相手を踏み躙り、利益を吸い取ってしまう暴挙に出ることもあるでしょう。
誠実と信頼で結ばれた関係では、相手が危機に陥れば自分のことのように考え、最小限の被害で危機を脱する方法をお互いが探し、共に危機を乗り越えることができます。
その為には、信頼を得た関係が必ず必要なのです。
3.両者が目指す目標
良好な関係を築き上げることができたら、目標達成の為にお互いがどうするべきか、考える段階に入ります。
考える項目は、次の五つです。
- 望む結果
- 守るべきルール
- 使える資源
- 責任に対する報告
- 結果に対しての評価・賞罰など
この五つの項目を、自分の立場、相手の立場とそれぞれから考えてみていくと、お互いが目指すべき結果の為に、お互いがどう行動したらいいか、イレギュラーが起きた時にどう対処すればいいかなどが明確になります。
職場や家庭で、誰かに仕事を頼む時には、この五つを共に考えることは非常に有効です。
一方的に指示されただけでは、相手は指示された言葉通りのことしかやらない上に、責任も持ちません。結果がどうなろうと、相手にはどうだっていいこととして認識されているからです。
けれど、良好な関係が築けている相手となら、この五つを明確にすることによって、相手は自分の責任において自発的に行動するようになります。それは、『お互いの望んだ結果に少しでも近づけよう』という思いを抱いているからです。
土台となる関係がしっかりとあり、その上で方向性や最終的な結果のイメージを共有することができれば、望んだ以上の結果を得られるかもしれません。
4.システムを見直す
個人の力はたかが知れていますよね。一人では不可能なことも、協力してくれる誰かがいるからこそ、可能になります。けれど、不可能を可能にする為には、システム(制度)が重要です。
いくら関係を良くし、信頼を増やして行っても、システムが目標とその為の行動に合っていなければ、望んだ結果は得られません。
例えば、「みんなで協力すれば利益は倍増する」という協力体制を敷く会社があります。一人の力で頑張るよりも、個々人やチーム、会社全体で協力し合えば、もっと利益は増やせるという考えです。
けれど、その会社では利益は思うように増やせません。
その原因は、システムが掲げた目標に合っていなかったからです。
「みんなで協力しよう」と言いつつも、各チームや個人間で利益率をグラフ化し、一番利益を出したチームや個人を表彰して特別な報酬を与えていました。
目標は「みんなで協力」であったはずですが、システムは「お互いを牽制し、出し抜く」方向へと導いています。
これでは協力のしようがありませんね。
目指す目標に対して協力し合おうとするなら、競争はあってはなりません。けれど、競争が有効な場面があるのは確かです。
お互いを競わせようとする時でも、基礎となる環境は協力体制が整い、お互いの為に行動できる環境があることです。その環境がある上でのみ、一時的な競争はお互いを奮起させます。
「自分だけが良ければいい」その考えを浮かばせないシステムがあれば、人はお互いの目標達成の為に、自発的に行動することができるのです。
5.結果を考えるプロセス
ここで少しだけ話を戻しましょう。
お互いに望んだ結果にする為に、誠実と信頼という土台を築き、お互いに目指す場所を明確にし、その為のシステムに間違いがないかを見直してきました。
ここでもう一度、『お互いに目指す場所』について考えてみてください。
自分が望む結果と相手が望む結果、もしそれが全く違うものだったとしたら、あなたはどうしますか?
どちらか一方が損をするしかないという状況で、あなたはその損をどちらに分配しますか?
お互いに望む結果が何なのか、どういう形になればお互いが納得できるのかを考える時、人は妥協案を考え出します。お互いに利益はあるけれど、多少の損も被ろうという案です。
これならば、お互いに利益も損も手にしているので、一見すれば平和的解決に思えますね。
けれど、本当のwin-winを望むなら、下の図のように『第三の選択』を考えてみてください。
どちらかに損が偏らないようにする妥協案ではなく、どちらかの結果に偏るわけでもなく、その上に存在するはずの第三の選択を、人はよく見落としてしまいます。
第三の選択を考える時には、次の四つの項目を順に考えていってみてください。
- 問題を相手の立場に立って見る。
- 対処すべき課題・関心ごとを明確にする。
- お互いが納得する結果にする為には、何が必要かを明確にする。
- その結果を得る為の選択肢を出す。
自分の立場で見た時に望むものは、とてもよく見えています。けれど、相手になったつもりで相手の立場に立った時、見過ごしていたものがあることに気が付くことは多いですよね。
本当の意味で相手の立場に立てば、妥協案ではなく、第三の選択を考えようとします。
相手の立場、自分の立場で『望む結果』を考える
職場や家庭などにも応用できる対人関係の基礎は、いきなり全てを実行しようとするのは少々難しいかもしれません。まずは、相手との関係を見直すところから始めてみてはいかがでしょうか。
信頼残高が少ないと思ったら、信頼を増やす為の行動を、どちらかが損を押し付けられていると思ったら、お互いにとって望ましい結果を得られる考えを持ってみてください。
相手の立場に立って考えるのは、簡単なようで難しいものです。相手の立場に立っているようで、どこか軽視してしまう部分があれば、それは相手の立場に立った考えではなくなります。
けれど、思考を変え、行動を変えていくことで、自分を変えることができます。
そうやって変化し、お互いに望む結果を得られるようにと行動できるあなたであれば、人との関係は大きく変わっていくでしょう。
関わり方が変わると、人は自然と態度を変えます。
それは、あなたの態度が変わったからです。
生き辛さを減らせるように。
思考を、自分を、変えていきましょう。
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